あいまいな中央分離帯

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まず霧吹きが登場する。彼は気が狂っていた。
ことあるごとに液体を撒き散らし、周囲を威嚇していた。

中身は化粧水である。
手製で配合されたものであり、少なくなると主人である女性によって足されている。
毎日、主人の風呂上がりに化粧水を提供することが彼の仕事だ。
若くて将来ある女性には必要不可欠であろう。
そんな彼に対する主人の扱い方はこうだ。
彼を手に取り、吹き出し口に手のひらを近づけ、中の液を出す。
普通に思うだろうか? それは違う。
出てくる化粧水に勢いは無く、吹き出すというより滴り落ちるという有様だ。
これはひどい。
このような体たらく、ペットボトルのやつでもできる。
霧吹いてこそ、霧吹きである。

しかし、主人にとっては、これでいいのだ。
化粧水を手にとって、顔に塗れれば、それで良しというわけだ。
これでは霧吹きである必要はほぼ皆無であり、
シャンプーの容器か何かに変えればいいのだ。

厳かに液体を装填し。
手首を振って攪拌し。
静かに照準を合わせ。
素早くトリガーを絞る。

正しい霧吹き方である。

彼は泣いていたのだ。

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