あいまいな中央分離帯

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「いくら目薬っていっても、染みるか気持ちいいかだろーが! コレ目が痺れんだよぉ!」
空を切った目薬は、床に跳ね返り部屋の片隅へ消えていった。
いくら歪んだ視界でも、ゴミ箱に収まらなかったのは一目瞭然というものだ。
溢れて頬を冷やす虚しさを無視して、視界を握りつぶすように目をつぶる。
何のことはない。瞼が痙攣してるから、それを抑えてるだけだ。
呼吸を整えるように大きく息を吐き出す。部屋の空気が流転し、また虚しさが蘇る。
だから息を止めた。でもまた再開する。
新品同然の目薬も、いまや部屋の片隅に転がるゴミに戻った。
だけどいつの日か、滅多にしないであろう掃除の時とかに、使用期限が切れていた目薬を手にするんだ。
そしてまた、同じ苦しみを味わう。
「たまらんな。」
治療が必要なのは、頭かもしれない。

※この文章は「いかだ」「目薬」「治療」を文中に使用した三文形式です。

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