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ビターン!
「な、なんだ?」レジ裏の死角部分に手を伸ばしながら、音がした方を凝視する。
店の入り口、そこにはとんでもない光景が広がっていた。
女の子が自動ドアに張り付いていた。
顔が赤くなってるのは、どんな理由からだろうか。
ウィィーン。
ばたっ。
ドアが開いて崩れ落ちる女の子を、呆然と見つめたままでいる俺。
動かない女の子。
年は、俺より少し若いくらいか。
うつぶせで倒れているので顔は見えない。
スカートがめくれているのは黙っているとして、どうしたものか。
助けようか、このままパン……様子を見ているか思案していると、
彼女は音もなくゆっくりと起き上がった。
涙目だ。
そんな目で見つめられても困るぞ。
さっき見たときより顔が赤くなっているのは、倒れるときにぶつけたからではなく、恥ずかしいからだろう。
耳当てのような物をしているのでわからないが、きっと耳も赤くなってるな。
「い、いらっしゃいませ」
そんな彼女を、普段通りの営業スマイルで迎える。
乙女心をこれ以上傷つけまいとする配慮だったんだが、どうやら逆効果だったみたいだ。
こちらから見える肌という肌を真っ赤にして、俯いてしまった。
俺が悪いのか? 疑問に思いつつも、人として声をかけることにした。
そう言うと、足早に店の奥の方に消えていった。
本屋に来たのだから本を探しているんだろう。
しかし、そっちは――
お、出てきた出てきた。
さすがにピンクゾーンに用はなかったか。
彼女が恥じらいながらも「淫乱痴女の童貞筆おろし100連発」なんて持ってきたらどうしようかと心配しちゃったよ。
彼女は恥ずかしかったのか、こちらから見えない本棚の奥の方に隠れて気持ちを落ち着けているようだ。
まあ、ミラーで見えるわけだが。
ひと息入れて落ち着いたのか、今度は置いてある本を遠巻きに確認してから、ゆっくりと本を探していくようにしたらしい。
探してる本があるなら店員に聞けばいいのに。
見てて飽きないからいいけど。
雑誌コーナーに入った彼女は、一冊の本を手にとってパラパラと読み始める。
そして、探していた本だったのか、レジに持ってくるようだ。
あと本棚一つ分の距離まで近づいた時、彼女の足がピタッと足が止まる。
そこの角を曲がれば、もうレジは目の前という所だ。
胸に手を当てて、息を吸って……吐いた。
深呼吸だろうか。
そうして気合いを入れた彼女は、レジへとやってきた。
彼女が持ってきた本は――
心臓は早鐘を猛連打したように危険が危ない状態だ。
わけがわからないが、ともかく、動揺しているんだ。
こんな大人しそうな――ちょっとドジみたいだが――女の子が、エッチな本を持ってやってきた?
これは誘われているのか? そうか、そうなのか?
は! 違う、きっとこれもちょっとしたドジに違いない。
そうじゃなかったら、これは、ええと、どうしよう!
言った。言ってしまった。
天下分け目の関ヶ原で、西軍を裏切って東軍についた小早川秀秋の心境とは、まさにこの事だろう。
苦渋の決断だった。
しかし、今の俺は、見事に東軍を討ち滅ぼして勝ち鬨を上げているのだ!
そうだ。大儀は我にあり、ズバリ言ってやるぞ。
「こういうのって……あの、なにか勘違いしてるんじゃないですか?」関ヶ原の戦いの2年後、小早川秀秋は21歳で病死。
その不自然な死については、さまざまな噂が囁かれた。
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